歯周病は「歯ぐきの病気」と思われがちですが、実はお口の中だけの病気ではありません。歯周病菌が血液を通して全身に広がることで、糖尿病や心疾患、認知症など、さまざまな全身の病気と深く関係していることがわかっています。

また、お口の健康は全身の健康の入り口ともいわれています。今回は、歯周病と全身の病気との関係、そして健康を守るためにできることについて解説します。

■歯周病が影響する全身の病気

歯周病は、歯を支える歯ぐきや骨に細菌感染が起こり、徐々に炎症が広がっていく病気です。歯周病菌や炎症で発生する物質が血液中に入り、全身の臓器や血管へ悪影響を及ぼすことで、以下にあげるようなさまざまな病気の発症や悪化に関係しています。

◎糖尿病

歯周病と糖尿病は、互いに悪影響を及ぼし合う関係です。糖尿病により血糖値が高い状態が続くと免疫力が低下し、歯ぐきに炎症が起きやすくなります。

一方で、歯周病が進行すると体内の炎症性物質（サイトカイン）が増加し、インスリンの働きを妨げて血糖コントロールを悪化させます。

実際に、歯周病を治療することでHbA1c値（血糖値の指標）が改善したという報告もあり、糖尿病管理には歯周病ケアが重要な要素とされています。

◎心疾患（動脈硬化・狭心症・心筋梗塞）

歯周病菌が血管内に侵入すると、血管の内壁で炎症が起き、プラーク（血管内の脂質沈着）が不安定になります。これにより血栓ができやすくなり、動脈硬化や心筋梗塞、狭心症などを引き起こすリスクが高まります。

重度の歯周病患者では、血液から歯周病菌のDNAが検出されることもあり、心臓の健康維持には歯ぐきの管理が不可欠です。

◎脳血管疾患（脳梗塞・脳出血）

歯周病による慢性炎症は、脳の血管にも悪影響を及ぼします。歯周病菌の毒素や炎症性物質が血流を通じて脳に届くと、血管の内壁を傷つけて血栓ができやすくなり、脳梗塞を誘発することがあります。

特に高血圧や脂質異常症などの生活習慣病を併発している方では、歯周病が脳血管疾患のリスクをさらに押し上げることがあるため注意が必要です。

◎誤嚥性肺炎（ごえんせいはいえん）

高齢の方に多く見られる誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液と一緒にお口の中の細菌が気管や肺に入ってしまうことで起こります。

歯周病菌はその主要な原因菌の一つであり、口腔内を清潔に保つことが肺炎予防につながります。日常の歯みがきだけでなく、歯科医院での専門的なクリーニングや義歯のケアを継続することが大切です。

◎認知症

歯周病菌の代表的な種類である「ポルフィロモナス・ジンジバリス（P.g菌）」は、血液を介して脳に入り込み、炎症を引き起こすことが確認されています。

最近の研究では、この菌がアルツハイマー型認知症の発症や進行に関与している可能性があるとされています。また、歯を失って噛む力が弱まると、脳への刺激が減り、認知機能の低下を招くこともあります。

つまり、歯ぐきと歯の健康を保つことは、脳の健康維持にもつながるのです。

◎関節リウマチ

関節リウマチは、免疫の異常によって関節に炎症が起きる病気です。最近では、歯周病菌が関節リウマチを悪化させる自己抗体の形成に関わっていることが分かってきました。

歯周病を治療することでリウマチの症状が軽くなるケースも報告されており、両者は炎症を介して密接に関連する疾患といえるでしょう。

※大阪医科薬学大学・サンスター株式会社｜
歯周病治療と関節リウマチ患者の症状改善の有効性に関するリリース

◎早産・低体重児出産

妊婦さんが歯周病を患っていると、炎症によって放出される物質が子宮収縮を促し、早産や低体重児出産のリスクを高めることがあります。

妊娠中はホルモンの影響で歯ぐきが腫れやすく出血しやすいため、「妊娠性歯肉炎」に注意が必要です。妊娠期でも安全に受けられる歯科検診やクリーニングを行い、母体とお子様の健康を守ることが大切です。

■お口と全身の健康を守るために

歯周病は、日々のケアと定期的な歯科受診で予防できる病気です。正しい歯みがき方法を身につけ、歯ブラシに加えて歯間ブラシやデンタルフロスを使用することで、歯と歯の間のプラークを効果的に除去できます。

また、生活習慣の改善も重要です。喫煙は歯ぐきの血流を悪化させ、免疫機能を低下させるため、歯周病を進行させる原因のひとつになります。また、バランスの取れた食事や十分な睡眠、ストレスの軽減も歯ぐきの健康維持に役立ちます。

■まとめ

歯周病は、単なる歯ぐきの病気ではなく、全身の健康にも影響を及ぼす重大な疾患です。糖尿病や心疾患、認知症、早産などを防ぐためにも、毎日のケアと歯科医院での定期的なメインテナンスが欠かせません。

しんみ歯科高田馬場では、歯周病の早期発見と再発予防にも力を入れています。気になる症状がある方は、お早めにご相談ください。