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妊娠中・授乳中に歯の色が気になるときに知っておきたい判断の目安
妊娠中や授乳中に歯の色を整えたいときは、漂白の薬を使うホワイトニングはお休みし、歯の表面についた色を落とすクリーニングや毎日のお口のケアを選ぶのが基本です。口元を気にせず過ごしたい気持ちと、おなかの赤ちゃんや授乳中のお子さまへの心配の間で迷うこともあるかと思います。この記事では、ホワイトニングを控える理由や薬を使わないケアでできること、市販品を選ぶときの見方、歯科医院で聞いておきたいことをまとめます。
この記事の要点まとめ
- 妊娠中や授乳中は、漂白の薬が赤ちゃんにどうひびくかがまだよく分かっていません。そのためホワイトニングはお休みし、いつまた始めるかを歯科医師や産科の先生に相談します。
- クリーニングやエアフローは表面の着色を落とすケアで、歯そのものの色調を明るくする処置とは異なります。
- 市販品の成分や歯ぐきの状態を確認し、希望する変化・通院回数・費用を事前に歯科医院へ尋ねましょう。
妊娠中・授乳中にホワイトニングを見送る理由と「影響が確認されていない」の意味
「危険と分かっている」ではなく「確かめる研究が足りない」という違い
歯科医院で行うオフィスホワイトニングや自宅で行うホームホワイトニングは、妊娠中や授乳中の時期は避けた方がよいとされています1。これは、ホワイトニングに使う漂白剤が、おなかの赤ちゃんや母乳を飲む赤ちゃんにどう影響するかが、まだ確かめられていないためです1。
悪影響が明確に証明されているわけではありませんが、妊婦や授乳婦を対象とした研究自体が少ないという背景があります。また、歯を白くする処置は痛みを取る治療とは異なり、急いで行う医学的な必要性が低いことも、この時期に見送られる判断材料となっています。
妊娠中と授乳中で異なる考え方と、再開時期を決める材料
妊娠中も授乳中も、漂白剤が赤ちゃんにどう影響するかが分かっていないため、この時期は控えた方がよいとされています1。そのため、ホワイトニングの再開は授乳が終了した後を目安に検討するのが一般的です1。
再開の時期を決めるときは、授乳のようすだけでなく、産後の体の調子や眠りのリズム、歯ぐきの腫れや歯がしみるかどうかも歯科医師と一緒にみていきます。妊娠中の経過や、授乳が長く続くときの考え方によっても答えは変わるため、かかりつけの産科の先生にも聞いておくと決めやすくなります。
気づかずに施術を受けたときに確かめたい薬剤名・施術時間・症状
妊娠に気づく前や授乳中にホワイトニングを1回受けてしまった場合でも、まずは落ち着いて施術内容を確認してください。手元に控えがあれば、使用した薬剤の種類、施術の方法(オフィスかホームか)、施術時間、現在の歯のしみや歯ぐきの痛みの有無をメモしておきます。
そのうえで、施術を受けた歯科医院やかかりつけの産科の先生に内容を伝え、これからのことを相談しましょう。授乳を続けてよいか気になる場合は、施術内容を伝えて医師に相談しましょう。
クリーニング・エアフローとホワイトニングで変えられる色の範囲の違い

黄ばみが表面の着色か、歯そのものの色かを見分ける目安
ご自身の歯の黄ばみが薬剤を使わずに落ちるかどうかは、色のついている場所と広がり方が目安になります。コーヒーや紅茶、カレーなどの飲食物による表面の着色汚れ(ステイン)であれば、専用の器具による清掃で本来の歯の色に近づけられる可能性があります。
歯と歯の間や、歯ぐきの境目に沿って茶色い筋のように見える汚れは、表面の着色であることが多いです。一方で、歯全体が根元から先端まで均一に黄色みを帯びている場合は、加齢や歯の内部(象牙質)の色が透けている状態のため、薬剤による漂白でないと色調そのものは変わりにくい傾向にあります。自宅での色チェックはおおよその目安にとどめ、最終的には歯科医院の診査で見極めてもらいましょう。
薬剤の有無・期待できる変化・通院の目安を一覧表で整理
歯の表面を整えるケアと、歯の内部から色を変える処置の違いを以下の表にまとめました。
| 処置の種類 | 漂白薬剤の有無 | 変えられる色の範囲 | 1回の所要時間・回数の考え方 | 妊娠中・授乳中の扱い |
|---|---|---|---|---|
| クリーニング(PMTC) | なし | 表面の歯垢・歯石・軽度の着色を除去し本来の色へ近づける | 30〜60分程度・状態に応じ1〜数回 | 体調に合わせて実施可能 |
| エアフロー | なし(微細な粉末と水流を使用) | 器具が届きにくい隙間の茶渋や着色汚れに働きかける | 30〜60分程度・基本的に1回から | 歯ぐきの状態を確認し実施可能 |
| オフィスホワイトニング | あり(漂白の薬剤) | 歯の内部の色素を分解し元の色より白くする | 1〜複数回(希望の白さによる) | 控えるのが基本1 |
| ホームホワイトニング | あり(漂白の薬剤) | 自宅でマウスピースを用い徐々に内部から白くする | 歯科医師の指示にそって一定期間続ける | 控えるのが基本1 |
着色除去を目的としたクリーニングやエアフロー、およびホワイトニングは公的医療保険が適用されない自費診療となります。一般的な費用相場は、自費のクリーニングやエアフローで5,000円〜1万5,000円程度、オフィスホワイトニングで1回2万〜5万円程度、ホームホワイトニングで1万5,000円〜4万円程度です。なお、記載した金額は一般的な相場であり当院の費用ではありません。当院のホワイトニングの料金は、ホームホワイトニング9,900円、オフィスホワイトニング19,800円です。実際の費用や回数、内訳は医療機関により異なりますので、受診される医院にてご確認ください。
また、ホワイトニングの薬剤には、歯科医師の管理のもとで歯科の卸から仕入れる国内承認のもののほかに、国内で承認されていない薬剤が使われることもあります。歯科医師が海外から個人で取り寄せた薬剤や、認められた目的とは別の使い方をする製品(適応外使用)などです。同じ成分や同じ効き目の承認された薬剤があっても、治療の方針で未承認のものが選ばれる場合があります。
未承認の薬剤には、アメリカのFDAなど海外で承認されているものもあります。ただし国内では承認されていないため、重いリスクがまだ分かっていないおそれがあります。その場合、重い副作用が出ても、薬や医療機器の副作用に対する国の救済制度は使えません。
着色除去だけでは変化を感じにくいケース
クリーニングやエアフローは、あくまで歯の表面に付着した汚れの除去を目指し、元の歯の色に近づける処置です。そのため、もともとの歯の色調が黄みがかっている方や、普段から着色が少ない方が受けても、処置の前後で見た目の変化を実感しにくい場合があります。
また、前に治した前歯の詰め物や被せ物の色が変わっている場合も、表面をきれいにするだけでは色は変わりません。通う手間やかかるお金がむだにならないよう、処置を受ける前に、自分の歯でどのくらい変わりそうかを歯科医師に聞いておくことが大切です。
ポイント
茶渋やタバコのヤニなど表面についた色は、多くの場合、歯科医院で歯の表面をみがく処置で、もとの歯の色に戻せます2。ただし、汚れのつき方によって結果には差があり、処置のあとに一時的に歯ぐきから血が出たり、歯がしみたりすることもあります。また、歯そのものの色調を元の色より明るくしたい場合は、授乳終了後にホワイトニングを検討する方法があります。
市販品を使う前・着色除去を受ける前に確かめたい歯ぐきと成分
ホワイトニング歯みがき剤の成分表示と研磨性の見方
市販の「ホワイトニング」と書かれた歯みがき剤の多くは、歯の表面についた色を落とす成分を入れた製品です。国内の市販品には、歯科医院で使うような濃い過酸化物はふつう入っていません。ただし、海外から個人で取り寄せた品などには漂白の成分が入っているものもあるため、妊娠中や授乳中は使わないようにしましょう。
成分表示を見る際は、着色を落とす成分のほか、研磨剤(清掃剤)の種類や強さを確認し、強い力でゴシゴシこすり続けないことが注意点です。研磨性が強いものを強い力で使い続けると、歯の表面や歯ぐきに負担がかかることがあります。使ってよいか迷う製品があれば、パッケージを持参して歯科医師に確認しましょう。
歯ぐきの出血があるときは、白さより先に診てもらう理由
妊娠中はホルモンバランスの変化に加え、つわりで歯みがきが短時間になったり奥までブラシが届きにくくなったりすることで、歯肉炎(歯ぐきの炎症)が起こりやすくなります。歯みがきのときに出血や腫れがある場合、着色除去やエアフローは歯ぐきの状態を確かめてから行います。処置にともなって、一時的に歯ぐきから血が出たり歯がしみたりすることもあるためです。
歯を白くすることだけではなく、その後の出産・育児期も長持ちする健康な歯を保つためには、まずむし歯や歯ぐきの炎症がないかを診査することが先決です。出血や腫れを落ち着かせてから清掃を行う方が、処置中の痛みや不快感も抑えられます。
つわりや仰向け姿勢の負担を減らす受診の工夫
妊娠中に歯科医院を受診する際は、つわりが落ち着きやすい安定期(妊娠中期)を選ぶのがひとつの目安です。お腹が大きくなってくると、診療チェアを倒した仰向けの姿勢が苦しくなることがあるため、予約時や受付で現在の妊娠週数を伝え、背もたれの角度を浅くしてもらうよう相談しておきましょう。
また、器具が口に入ると気持ち悪くなりやすい(嘔吐反射がある)場合や、体調に合わせてこまめにうがい・休憩を挟みたい場合も、遠慮なく事前に伝えておくことで通院の負担を和らげることができます。
時期と希望で選ぶケアと、受診前にまとめたい質問
出産前に整えたい方・授乳終了まで待つ方それぞれの選び方
どのケアを選ぶかは、黄ばみの原因と「いつまでに整えたいか」というご希望によって変わります。出産前の写真撮影や仕事の予定に向けて口元を整えたい方で、原因が茶渋などの表面汚れであれば、妊娠中でも体調に配慮しながらクリーニングやエアフローを検討できます。
一方で、歯そのものの色調を明るくしたい場合は、無理をせず授乳終了後に歯科医院でのホワイトニングを計画するのが穏当です。セルフホワイトニングサロンや歯のマニキュアなどの一時的な処置に迷いがある場合も、同じように考えましょう。授乳が1年以上続く場合でも、その間にむし歯や歯ぐきの状態を整えておくことが、いつでもホワイトニングを始められる準備につながります。
歯科医院に相談する前にまとめたい質問リスト
お子さまの送り迎えの合間や仕事の前後など、限られた時間で歯科医院へ相談に行くときは、聞きたいことを前もってまとめておくと、診察がスムーズに進みます。
- いまの歯ぐきのようす(血が出る・腫れている)から見て、クリーニングやエアフローは受けられるか
- 自分の歯の黄ばみは、表面をきれいにするとどのくらい変わりそうか
- 処置で使うペーストやパウダーの種類と、漂白の薬が入っていないか
- 1回にかかる時間と、終わるまでに通う回数の目安
- 保険でできる歯石とりと、自費の着色とりそれぞれの費用
- 産後や授乳が終わったあとにホワイトニングをしたいとき、いつごろから相談できるか
白さと一緒に、出産後も長く使える歯を守るために
人によって指や爪の形が違うように、歯の色調や形、着色しやすさも一人ひとり異なります。歯の状態だけを見れば処置の選択肢は決まるかもしれませんが、妊娠週数や授乳のご予定、日々の生活背景によって、どの時期に何を行うかの答えは変わってきます。
目先の白さだけでなく、生え変わりのない大切な歯を出産後も長く健康に保てるよう、まずは現在のお口の状態と皆様のお考えを歯科医師に聞かせてください。ご納得いただける方法を、私たちと一緒に見つけていきましょう。
よくあるご質問
Q. 妊娠中や授乳中にホワイトニングをするのはなぜ控えるのですか?
ホワイトニングで使用する漂白剤について、胎児や乳児への影響が十分に確認されていないためです1。健康への悪影響が明確に証明されているわけではありませんが、妊娠中や授乳中の人を対象にした研究が少ないこと、また急いで行う処置ではないことから、この時期の施術は見送るのが基本とされています。
Q. 妊娠や授乳中にホワイトニングを1回受けてしまいました。大丈夫でしょうか?
いまのところ、1回のホワイトニングがどうひびくかは、はっきり分かっていません。まずは落ち着いて、使った薬の名前や時間、歯がしみる・歯ぐきが痛むといった症状があるかを確かめ、受けた歯科医院やかかりつけの産科の先生に相談してください。授乳について気になることも、自分だけで決めずに医師に聞いてみましょう。
Q. 授乳中にサロンなどのセルフホワイトニングをしてもよいですか?
サロン等で行われるセルフホワイトニングは、過酸化物などの漂白剤を使わず表面の汚れを落とす方式が多いものの、使用される溶液やジェルの成分は施設によってさまざまです。授乳中に口に入れるものとして気がかりがある場合は利用を控え、成分が明確な歯科医院でのクリーニングを歯科医師と相談のうえで検討してください。
Q. 自分の歯の黄ばみレベルや、クリーニングで白くなるか見分ける方法はありますか?
鏡で見たときに、歯と歯の間や歯ぐきのキワに茶色い汚れが部分的に付着している場合は、クリーニングで軽減を目指せる着色汚れの可能性が高いです。一方、歯全体が均一に黄色っぽい場合は歯の内部の色によるものが多く、清掃だけでは色調が変わりにくいため、歯科医院にある色見本(シェードガイド)を用いて歯科医師に確認してもらいましょう。
Q. 妊娠中に銀歯や詰め物が取れた場合は、何日以内に受診すべきですか?
詰め物が取れたときは、痛みがなくても数日〜1週間以内を目安に、かかりつけの歯科医院で診てもらいましょう。詰め物が取れたところは歯の内側がむき出しになり、むし歯が進みやすくなるためです。しみる、痛むといった症状があるときは、さらに早く受診してください。
取れた詰め物はティッシュに包むとつぶれやすいので、小さな入れ物に入れて持っていきましょう。受付で妊娠週数を伝えて、応急の処置やつけ直しを相談してください。
参考文献
1. 日本歯科医師会「ホワイトニング – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020」 https://www.jda.or.jp/park/lifestage/BK/white.html
2. ホワイトニング – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020. https://www.jda.or.jp/park/trouble/white.html
日本大学松戸歯学部付属病院入局
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