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長く使えていた奥歯が、今になって痛み出したとき
「10年以上何ともなかったのに、なぜ今になって」。根の治療を受けた奥歯が急に痛み出した患者様から、よく伺う言葉です。原因は根の中の再感染だけではありません。被せ物の下のむし歯や歯のひびなど、いくつかの可能性があります。考えられる原因と、急いで連絡したい症状の目安を順にお伝えします。
この記事の要点まとめ
- 昔治療した歯の痛みは、根の再感染や被せ物の下のむし歯、歯のひびなど複数の原因が考えられます。
- 顔の腫れ・発熱・飲み込みにくさがある場合は当日中に歯科へ連絡し、息苦しさは救急相談を検討します。
- 受診までは刺激を避け、薬の表示を守り、症状の経過や服薬内容、通院できる日時を歯科へ伝えましょう。
昔治療した歯が急に痛い原因は何ですか?

昔治療した歯の急な痛みには、根の中の再感染、被せ物の下のむし歯、歯のひびなど、複数の原因が考えられます。神経を取った歯でも、根の周りの組織には感覚が残っています。そこに炎症が起きれば、痛みとして感じます。
ポイント
痛み方だけで原因を一つに決めず、診察で確かめるところから始めましょう。
神経を取った歯でも、根の先に膿が再発するのですか?
はい、起こり得ます。根の中や根の先に炎症が起きている可能性もありますが、原因や処置の必要性は診察で歯科医師が判断します。再治療が必要な歯では、以前の処置で清掃しきれなかった部分が細菌のすみかとなり、痛みや経過に影響することがあります。
人によって指の形が違うように、根の本数や曲がり方にも個人差があります。細く入り組んだ根管ほど、清掃が難しくなります。
被せ物や銀歯の下のむし歯でも痛みますか?
痛むことがあります。詰め物や被せ物の境目にすき間ができると、そこから二次むし歯が進み、土台や根の中まで細菌が届く場合があるためです。
奥歯の詰め物では、むし歯の再発や破折が交換理由として調べられています1。ただし、素材の違いだけで原因は決められません。むし歯の処置方法によっても経過は変わるため2、境目と土台の状態を一つずつ確認していきます。
歯のひびや噛み合わせが原因のこともありますか?
あります。神経を取った歯は、むし歯や処置で残っている歯の量が少ないことが多く、ひびが入りやすい傾向があります。噛んだ瞬間に痛む場合は、歯の破折も疑われます。
詰め物の高さや歯ぎしりで一本の歯に力が集中し、歯の周りが炎症を起こすこともあります。ひびの位置や深さによって歯を残せるかの判断が変わるため、早めに診察を受けてください。
痛むのは治療した歯ではなく、隣の歯や歯ぐきですか?
奥歯の痛みは、場所を取り違えやすいものです。実際には隣の歯のむし歯、歯ぐきの急な腫れ、奥の親知らずの周りが原因のこともあります。上の奥歯の近くにある上顎洞の炎症や筋肉に由来する痛みが、歯の痛みとして感じられることもあり、歯以外が原因の痛みを非歯原性歯痛と呼びます3。
痛みや腫れがあるとき、いつ歯科へ連絡すればよいですか?

顔の腫れ、発熱、飲み込みにくさがある場合は、その日のうちに歯科医院へ連絡してください。痛みが数日続く場合や、だんだん強くなる場合も、予定を待たずに相談する目安になります。痛み方は連絡時の手がかりになりますが、原因を自分で判断する材料にはなりません。
顔の腫れや発熱、飲み込みにくさがあれば急ぐべきですか?
急いで連絡してください。根の先の炎症が周りに広がると、次のような症状が出ることがあります。
- 頬や顎の下まで広がる腫れ
- 発熱や全身のだるさ
- 歯ぐきから膿が出る、口が開けにくい
- 唾や食べ物を飲み込みにくい
息苦しさがある場合は歯科の予約を待たず、救急相談窓口(#7119など)や救急外来の受診を検討してください。
噛むと痛い、冷たい物がしみる、何もしなくてもズキズキする違いは?
痛み方ごとに疑われる部位はある程度ありますが、それだけで原因は特定できません。
| 痛み方 | 考えられることの例 |
|---|---|
| 噛むと痛い | 根の先の炎症、歯のひび、詰め物の高さ |
| 冷たい物がしみる | 被せ物の境目のむし歯、隣の歯、知覚過敏 |
| 何もしなくてもズキズキする | 根の先の急な炎症、神経が残っている隣の歯の炎症 |
神経を取った歯そのものは、冷たさを感じにくくなっています。しみる場合は、隣の歯の可能性も含めて考えます。眠れないほど痛む、鎮痛薬が切れるとすぐ痛みが戻るといった場合は、早めに連絡してください。
銀歯が取れて痛む場合も、様子を見てよいですか?
痛みがあるなら、日数で区切って待たずに連絡してください。取れた後の歯は刺激を受けやすく、内側でむし歯が進んでいることもあるためです。
取れた銀歯は軽く洗い、小さな容器に入れて保管します。市販の接着剤などで自分で戻すのは控えてください。
受診までの間、痛む歯にはどう対処すればよいですか?
受診までは痛む歯を刺激しないようにしましょう。市販の鎮痛薬を使う場合は、表示や薬剤師の案内を確認してください。薬で痛みが和らいでも原因がなくなったわけではないため、落ち着いているうちに予約を取っておきましょう。
薬を買うとき、飲み合わせや体調は何を確認しますか?
コンビニで扱う薬は種類が限られ、置いていない店舗もあります。ドラッグストアや薬局で、薬剤師などに相談しながら選んでください。購入時には次の点を確かめてください。
- 妊娠中・授乳中ではないか
- 胃腸や腎臓の病気、喘息などの持病がないか
- ほかに飲んでいる薬やサプリメントと成分が重ならないか
用法・用量は箱の表示を守り、効かないからといって追加で飲まないでください。 何をいつ飲んだかをメモしておくと、受診時の説明がスムーズになります。
温める、薬を歯に詰める、強くうがいするのは避けるべきですか?
いずれも控えてください。一般の応急手当では、数日後に患部を温める方法も紹介されており、歯の痛みへの対処は歯科医師にご相談ください4。冷やす場合も、氷を直接当てず、濡らしたタオルを頬に当てる程度にとどめます。
痛む穴に市販の薬や脱脂綿を自分で詰めると、診察のときに状態が見えにくくなることがあります。痛む側では無理に噛まず、やわらかい歯ブラシで周りの汚れを落として、口の中を清潔に保ちましょう。
歯ぐきや親知らずの周りが腫れたときも、うがい薬で一時的に落ち着いて見えることがあります。それだけで済ませず、受診につなげてください。
ポイント
温めない、自分で詰めない、強くうがいしない。鎮痛薬は表示を守り、痛みが引いても受診につなげましょう。
歯科では何を調べ、仕事や育児の予定をどう伝えればよいですか?
歯科医院では、痛みの経過を伺い、口の中を診たうえで、必要に応じてレントゲンなどの画像で原因を探ります。以前の治療記録がなくても相談できます。通院できる日時や治療への希望も、最初に伝えて構いません。
以前の治療記録がなくても、どんな症状を伝えればよいですか?
記録がなくても、診察は今の症状から始められます。伝えていただきたいのは、いつから・どの歯が・どんなときに痛むか、腫れや発熱の有無、鎮痛薬を使ったかどうかです。
「10年以上前に地元で根の治療をした」程度の記憶でも手がかりになります。予約の電話の段階で腫れや発熱を伝えておくと、診察の順番を調整しやすくなります。
レントゲンや歯科用CT、マイクロスコープで何を確かめますか?
口の中の診察とレントゲンで、根の先の影、被せ物の境目、隣の歯の状態を確認します。根の形が複雑な場合やひびが疑われる場合は、立体的に見られる歯科用CTを使い、根の数や向き、周りの骨の様子を調べます。
再治療に進む場合は、マイクロスコープ(歯科用の顕微鏡)で根の中を拡大しながら、以前の処置で清掃しきれなかった部分を探していきます。ただ、細いひびは画像に写らないこともあり、被せ物を外して初めて分かる場合もあります。
通院できる日時や歯を残したい希望はどう伝えますか?
「平日は子どもの迎えがあり、夕方は難しい」「来週の会議までに痛みを落ち着かせたい」といった事情は、遠慮なく最初に伝えてください。通院回数への不安や、できれば歯を残したいという希望も、治療方法を選ぶうえで欠かせない手がかりです。
歯だけをみれば治療法に正解があるかもしれません。けれど、生活の状況や治療への考え方によって、患者様に合う進め方は変わります。当院を含む歯科医院に相談する際も、根の中の再治療だけで終わらせず、再感染を防ぐ視点から土台と被せ物まで含めて考えることが大切です。
お仕事や子育てと両立しながら相談先を探している方は、予約の際に、通える曜日と気になっていることを一言添えてください。
よくある質問
Q. 根管治療のあと、治療した歯ではなく別の歯が痛むのはなぜですか?
A. 仮の詰め物で噛み合わせが一時的に変わったり、長く口を開けていたことで顎や筋肉が疲れたりして、別の歯が痛むように感じることがあります。隣の歯にむし歯がある場合も考えられます。痛みが長引くときや強まるときは、治療中の歯科医院へお伝えください。
Q. むし歯の治療後の痛みは、どのくらい続くものですか?
A. 処置のあとの一時的な痛みは、徐々に落ち着いていくことが多いとされています。ただし、続く期間には個人差があります。日ごとに強くなる、腫れが出てきたという場合は、予定の受診日を待たずに歯科医院へ相談してください。
Q. 根の再治療の通院回数や費用は、どのくらいかかりますか?
A. 根の状態、保険診療か自費診療か、土台や被せ物の種類によって大きく変わります。精密な根管治療では、一回の処置時間を長めに確保し、通院回数を抑えることを目指す考え方もあります。
自費診療で行う精密な根管の再治療の場合、通院回数・治療期間・費用の一般的な目安は次のとおりです。
- 通院回数:根管治療部分の回数は、炎症の程度や根の形によって異なり、診察のうえで歯科医師が判断します
- 治療期間:根管治療部分で数週間〜2か月程度。土台や被せ物の作製まで含めると、さらに2〜4週間程度かかることがあります
- 費用:一般的な相場は、前歯で5万〜10万円程度、奥歯で10万〜20万円程度です(診察・レントゲンやCTなどの検査、根の中の清掃と消毒、根の中を詰める処置を含む根管治療部分の目安)。実際の費用は医療機関により異なります
- 別途かかる費用:土台や被せ物は根管治療とは別の費用となり、素材によって数万円〜十数万円程度の幅があります
自費診療は公的医療保険が適用されません。これらは一般的な相場や目安であり、当院の費用や治療計画ではありません。実際の費用は医療機関により異なるため、各院にご確認ください。当院の費用・通院回数・治療期間は診察のうえでご案内します。
Q. 再治療をすれば、歯を残すことはできますか?
A. 歯を残す方法を検討することはできますが、残せるかどうかは根の状態やひびの深さによって変わります。根管治療を続けても改善が見られない場合には、根の先を処置する外科的な方法が検討されることもあります。歯の状態によっては抜歯が必要になる場合もあります。
根の再治療で起こりうる主なリスク・合併症には、次のようなものがあります。
- 治療後、数日ほど痛みが強まる、噛むと響く、歯ぐきが腫れる
- 古い詰め物を取り除く際に根の壁に穴があく可能性があり、リスクは歯の状態によって異なる
- 根管内で器具が折れるリスクがあり、ニッケル・チタン製の器具を1症例のみに使用してリスクを下げる取り組みもあります5
- 神経を取った歯はもろくなっているため、治療中や治療後に歯が割れることがある
- 処置を行っても症状が改善せず、外科的な処置や抜歯が必要になる場合がある
こうした点も含め、事前に説明を受けてから選んでください。
参考文献
1. Al-Sulimmani W, Al-Rasheed A, Al-Daraan H, et al. Failure Risk of Composite Resin and Amalgam Restorations: A Systematic Review and Meta-Analysis. International Dental Journal. 2025. PMID: 40578032 / DOI: 10.1016/j.identj.2025.100871
2. Dorri M, Martinez-Zapata MJ, Walsh T, et al. Atraumatic restorative treatment versus conventional restorative treatment for managing dental caries. The Cochrane Database of Systematic Reviews. 2017. PMID: 29284075 / DOI: 10.1002/14651858.CD008072.pub2
3. 非歯原性歯痛 – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020. https://www.jda.or.jp/park/trouble/toothache-fromother.html
4. 自宅などで行える応急手当 | 応急・救命処置 | 近畿大学 メディカルサポートセンター. https://www.kindai.ac.jp/health/emergency/teate/
5. 顕微鏡歯科外来 – 覚王山の歯医者なら 愛知学院大学歯学部附属病院. https://hospital.dent.agu.ac.jp/treatment/microscope/
6. Toopalle SV, Yadav I, Gupta A, et al. Effect of Laser Therapy on Postoperative Pain and Endodontic Retreatment: A Systematic Review and Meta-Analysis. International Dental Journal. 2024. PMID: 37985344 / DOI: 10.1016/j.identj.2023.10.012
日本大学松戸歯学部付属病院入局
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